先日「静岡は健全で羨ましい」というようなことを書いた。これはつまり「浜松は不健全で嫌だ」という意識の裏返しだ。果たして本当にそうだろうか?考えてみた。
イオンが志都呂と市野にでかい街を作って浜松への人々の流れをせき止めてしまった。このことが中心街陥没の大きな原因であることは間違いない。しかし、もともと浜松は人口の多さに比べて物が売れない地域だった。僕が14年前に浜松に帰って来て事務所を開業したときに「はましん」に勤める友人が遊びに来てそう言っていた。浜松は広い。平野が広がっていて人口が広域に分散している。いくら79万人になっても中心部の人口密度は静岡よりかなり少ないはずだ。身の程を知らなければこの現状は打破できない。
丸井が消え、名店ビルが消え、西武が消え、松菱が消え、イトーヨーカドーも消えようとしている。ザザシティも青息吐息だ。元気なのはメイワンと遠鉄百貨店だけだ。
僕が高校生の頃は名店ビルと松菱が全盛だった。赤電は「遠州病院前」で大きく東に曲がり、「馬込」(だったっけ?)でスイッチして浜松駅の左端に着くようになっていた。遠鉄全線でもっとも大きな駅は「遠州病院前」だった。浜松中心街に用がある人は皆この駅で降りてしまうからだ。遠鉄バスは皆名店ビルの前を経由していた。そのころはメイワンも無く、遠鉄百貨店も無かった。
つまり「遠州病院前」と「名店前」という交通の要が浜松駅周辺、つまり駅ビル、ロータリー、遠鉄百貨店、へとシフトしたことが松菱や西武の消滅の遠因なのだ。もともと浜松の需要はデパート二個分、ぐらいがちょうどよく、いくつもの大型店舗が共存するには無理があるんだと思う。新しく魅力的なデパートが出来れば今まで流行っていたデパートが暇になる、という単純な図式なんだと思う。供給過剰というやつだ。
更に、イオンが郊外にでかい街を二個つくった。このことによって中心部から離れて住む市民は皆便利になった。そのかわり街への人々の流れはますます細くなり、中心部は決定的な打撃を受けた。
行政の無策はもちろん責任を問われるべきかもしれないが、では誰かこの事態を食い止められただろうか?怪しいものだ。犯人探しをしても始まらない。現状の街の正確な「身の程」を把握して対策を考えることが重要だ。「79万都市にふさわしい…」などという望外なことは言っていてはならないと思う。コンパクトにまとめなければ賑やかさは戻るまい。
ところで、人々は浜松に行かなくなってしまったが僕自身は逆に頻繁に浜松に行くようになった。理由はひとつ、トゥルネラパージュがあるからだ。他では絶対に聴くことができない音を聴く為に僕はわざわざ天竜から浜松まで足を運ぶ。人々は「そこにしかないもの」があるところへ動く。
以前僕は大岡さんの日記に反応してこの問題について
コメントしたことがある。どうすれば中心部の空洞化を解消できるか、ということについてだ。
もう一度書いてみよう。「そこにしかない魅力を集積させる」というのが僕の戦略の基本。
たとえば、ザザシティの一部を「山田卓司館」にするってのはどうだろう?子供から老人まで全ての人の心を動かすアートというのはなかなか無い。山田卓司さんはそれを成し得る日本一のジオラマ作家だ。浜松の誇りと言える。遠く県外からも人が見に来るに違いない。宝塚は手塚治虫記念館で随分と観光収入を得たはずだ。
たとえば、ザザシティの一部を大型スポーツバーにするってのはどうだろう。大都市ではスポーツバーの大型スクリーンを見ながら贔屓のチームの勝敗に一喜一憂するのは見慣れた風景だが浜松にはまだそんな場所は無い。野球にしてもサッカーにしても決して関心が薄い地域ではないはずなのだから有ってもおかしくない。この楽しみ方は中心街でしかできない。酒を飲むからだ。
たとえば、ザザシティの一部を無料音楽スタジオとして開放してしまうというのはどうか?音楽人口は他の地域に比べ相当高いはずだ。音楽屋はえてして貧乏だ。「無料」に弱い。LIVEHOUSEを併設しても良いかも。
たとえば、横浜の「ラーメン博物館」「カレーミュージアム」「中華街」などのように気合の入った専門料理集合体を作り上げるのはどうか?「べんがら横丁」はそういう意味でいいねらい目だったと思う。スタートダッシュは成功した。しかし、今はもう人は並んでいない。郊外にも美味いラーメン屋はあるし、わざわざそこへ行って食べたいほどの魅力へは到達していないと思う。横浜の前出3地域に列を成しているのは皆遠くからやってきた観光客だ。突出した魅力をつくれなければ安定的な求心力は期待できない。
浜松で「食」と言えばうなぎだが、うなぎはラーメンほど食べ方にバラエティは無いしなぁ。「ケーキ街」というのはどうだろう?全国の超有名スイーツ店の支店を集中的に集めるのだ。メディアで名の売れたパティシエは結構大勢いる。皆個性が売りだ。店によってのバラエティはラーメン以上だろう。ラーメン博物館の発案者も全国の名だたる名店に日参して出展を懇願したという。ラーメンと違ってお持ち帰りも出来るしね。ラーメンは一杯食えば終わり、食べてもせいぜい二杯が限界だがケーキは梯子できる。どうよ、この案は。
ケーキ屋なんかに並べるかっ!という日本男児には「たこ焼き街」はどうか?ダメか?だめだな。
まぁグルメもいいが、やっぱり浜松と言えば音楽だ。音楽で人を呼べる場所に出来ないものか。このあいだバスドラの18インチのコーティングヘッドを買おうと思ったら浜松中のどの店にも置いてなかった。鍛治町のYAMAHAですら無く、注文した場合の金額を聞いたら「定価」だった。有り得ない。そんな商売成り立つわけが無い。結局浜北の足立楽器に取り寄せてもらった。定価よりは2割ぐらいは安かったと思う。
浜松は音楽の街ではなく、楽器の街だなどと揶揄されることが多いが楽器の町ですらない。少なくともドラマーにとって便利な町とは到底言いがたい。石橋楽器みたいなのが駅前にどかーんと建ってくれないものかなぁ。
脱線した。ザザシティのワンフロアをカーリング場にしたらどうか、などとも考えてみたがこれは駄案だ。現実性に乏しい。やっぱりオリンピック中じゃないと浮かばない発想だね。
ながながとつまらないことを書きつのってしまったなぁ。
アーキムーンのホームページの改定に伴いこの日記の階層を深くしてしまったので読者数がぐっと減った。探してでも読みたい人だけ読んでくれる方が気分的に気楽でいい。おかげで、書きたいこと書いちゃったなぁ。決して暇なわけじゃないんだが-----