田辺一邑の釈台

ドラマーな建築家

2009年06月20日 00:45

高校時代の同級生(♀)が講談師の真打に昇進し、浜松で披露興行を行うことになった。
名前は田辺一邑
6月26日が開催日だが、5月中旬には早々と200枚を売り切って既にキャンセル待ちになっている。
それはもちろん小中高時代の同級生の協力に依るところが大きいのだが、そんなふうに皆が動くというのも彼女のひととなりあってこそだ。
実は僕は「田辺一邑の真打昇進を祝う会」の代表をおおせつかっていている。責任重大だ。ではあるのだが、何を隠そうまだ彼女の講談を聴いたことがない。
なのではっきり断言できないが、彼女の講談は独特の間があってとても素晴らしい。(たぶん)
講談には「釈台」という必須アイテムがある。一邑さんの真打昇進を祝って、同級生で彼女に「マイ釈台」をプレゼントすることになった。
僕が設計し、知り合いの家具屋さん(天竜のI.W.Works)に無理やり超低価格で作ってもらった。ところがこの釈台、「軽さ」、「硬さ」、「音の良さ」のすべてを満足させなければならない難易度の高いしろもの。家具屋さんと試行錯誤の末、桐の心材にタモを練り付けることに落ち着いた。
これで「軽さ」と「硬さ」は一応備えたと思うのだけれど肝心の「音の良さ」は及第点をいただけるのであろうか?ドキドキである。
塗装は予算の都合上、僕が塗料を取り寄せて自分で塗った。蝶番のところが思いのほか難しく、これまた大苦戦したがなんとか完成。
釈台を入れる袋は東京のヒデ・エーシーアイに特注で作ってもらった。これがまた非常にしっかり作ってあって、ひょっとして一邑さん、釈台より袋の方が気に入っちゃうんじゃないかっていう出来なのだ。ふたの刺し子がアクセントになっている。

建築家はよく椅子を作る。椅子を設計する作業には、建築空間を考える作業の基本が全て詰まっているからだろう。釈台も同じだ。使う人の人間工学的な情報や使われるシチュエーションや目的をすべて考慮しなければならない。
果たして結果はいかに!ピシッ!

小さくておとなしい女の子だった彼女の変身振りに同級生は皆一様に驚いた。しかし、強い意志とへこたれない根性と黙って結果を出すカッコよさを皆尊敬し、誇らしく思っている。

この釈台を持って全国津々浦々、講談行脚をして欲しいものである。大学でドイツ文学を専攻していたそうなので、ぜひともドイツへ行ってドイツ人の前でドイツの歴史をドイツ語で講談してもらいたいなぁ。で、NHKのニュースに登場する一邑さんの前にこの釈台が据わっている、という筋書きだ。





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